夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
洋子は完全におチビの虜になっていた。


そして、貴司も。


「ようし。今日は貴司と遊ぼう」


貴司は妙に張り切り出して、茜と蒼太のお守りを始めた。


テレビの前で四つん這いになり、背中にふたりを乗せて歩き出す。


「ぱっかぱか、ぱっかぱか、お馬さんですよ」


貴司が言うと、ふたりがキャッキャとはしゃぐ。


「おうまさん、おうまさん!」


「おうましゃん」


茜と蒼太を貴司に預けて、あたしは洋子と一緒に食器を洗うことにした。


洋子が洗った食器を布巾で拭きながら、あたしは謝った。


「ごめんね。超失礼ぶっこいた」


洋子がクスクス笑う。


「びっくりしたけどね。でも、私は嬉しかった」


こっちがびっくりだ。


あたしの父と母もかなりズレてる夫婦だけど、洋子もズレてると思う。


16の小娘に呼び捨てにされて嬉しいだなんて。


……ズレてんなあ。


「私、直感したのよね」


ニヤリと不適な笑みを浮かべて、洋子が続けた。


「この子、裏表がないんだわって。私、好きなのよねえ、翠ちゃんみたいな一風変わった子」


「なにー、それはどういう意味か」


笑う洋子を腰でドンと押すと、


「そういうとこが、って意味よ」


と洋子は可笑しそうに笑って蛇口をひねった。


「変に気取って猫かぶられるより、よっぽどいい。響也にピッタリ」


と今度は洋子が腰であたしをど突き返してきた。


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