夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
気のせいかもしれない。


だけど、背中が熱くなったような気がした。


「いち……にい……さん……しー……い……」


急に体が重くなって、強烈な睡魔が襲ってくる。


瞼が下がってくる。


「ごー……」


視界が、霞んで急速にぼやけていった。


補欠、ありがと。


がんばるしかないよ、あたしたち。


お互いに、別々の場所だけど、やるしかないよ。


「ろ……く……」


カッ、と強烈な光がフラッシュのように目と突き抜けた瞬間に、あたしは意識を失った。


目が覚めたその時、そこにあるのは、補欠の笑顔でありますように。
















補欠の初陣は、涙で幕を下ろした。


その事を知ったのは、オペの翌日。


麻酔から醒めてまだぼんやりとした空間を漂いながらだった。


「翠!」


でも、それが補欠の声だという事ははっきり分かった。


「負けたんだ」


そっか。


「でも、夏は……絶対、必ず勝つからさ、翠……」


うん。


カク、と頷いて、あたしは再び深い眠りにストンと落ちていった。


10月、11月、は手術後の治療とリハビリの日々を送った。


11月下旬になると、外は見事に殺風景になった。


裸んぼうの、街路樹。


でも、12月に入ったとたんに、窓から見える景色は一気に華やかさを増した。


遠くに見える、クリスマスムード一色になったあたしたちが生まれ育った町並。


12月中旬。


窓の外を羽根のようなわた雪が、ふわふわと舞っていた。


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