夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「でも、ね」


折り紙を取り上げようとした看護師さんの手を、あたしは思いっきりは叩いた。


「触るな! これ、持たせてくれないなら、手術は受けないからね!」


これでもないと、あたし、頑張れないかもしれない。


「わがまま言わないで」


「うるさい! これ、黒魔術がかかってんの!」


補欠がかけてくれた、黒魔術が。


「持ってったらダメって言うなら、ぶっ殺す!」


ストレッチャーを囲む看護師さんたちが、ぎょっとして言葉を失ったようにあたしを見て来る。


でも、あたしは折り紙を手放す事を頑なに拒んだ。


助けてくれたのは、執刀医の長谷部先生だった。


「それ、彼氏から?」


「先生! お願い、頼むよ! これ、命より大事な物なんだ!」


折り紙を胸に強く押し当てると、長谷部先生はにっこりほほ笑んだ。


「うん、分かった。持っているといい」


だけど、看護師さんは「でも」と表情を歪ませた。


「僕が許可すると言ってるんだから、そうさせて下さい」


長谷部先生には、救われてばかりだ。


感謝しても、しきれない。


「先生、ごめんね。ありがとう」


コクリと頷いて、先生はやわらかく微笑んだ。


「さあ、頑張りましょう」


手術室に入るとすぐに手術台に移された。


体にモスグリーン色のビニール製の布がバサリとかかる。


あたしは胸に補欠流黒魔術がかけられた折り紙を押し当てた。


「これから、麻酔しますね」


「はいさ」


「じゃあ、僕がハイと言ったら、ゆっくり声に出して数字を1から言ってください」


左手にチクリと針が刺さる感触がしたあと、


「はい」


長谷部先生が合図を出した。
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