夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「まだ体がだるいだろう。今日は安静にしてください」


「へいへい」


クスクス笑いながら出て行った二人を確認したあと、


「これ以上大人しくしてられっか! む、りー!」


あたしはむっくりと体を起こした。


「う……」


と、同時にびっくりした。


自分の体をこれほどまでに重く感じたのは、初めてだった。


「何の冗談か」


節々が凝り固まり、ギシギシ音が出そうなほどだ。


「……あっ! コラ、翠!」


ゴキゴキ骨を鳴らしながらベッドから出ようとしていたあたしを、


「ちょっと目え離すとこれだ」


携帯電話を片手に戻って来た母が、両手で抑え込んだ。


「離せー! 体がなまる! くさる!」


「腐るか、あほう! 寝てろ! 動くな! しゃべんな!」


拷問だ。


「これ以上寝とれんわ! いい若者に動くなと言うのか!」


と母をかわそうとしたもののやはり体は正直で、するすると力が抜けて、再びベッドに倒れ込んでしまった。


「ほれ、見ろ。言わんこっちゃない」


あたしの体に毛布を掛け直して、母はパイプ椅子に浅く腰掛けた。


「すまん」


壁時計を見ると、針はちょうど10時を指していた。


窓から夏の白く清潔な陽射しが射しこんで来て、右半身に照り付ける。


「あー。暑い。ひとっ風呂浴びたいんだが」


要望を不満気に漏らすと、母は呆れ顔で笑った。


「仕方ないな。風呂は無理だが、歯磨きと洗面くらいならさせてやる」


「まじ? 頼むよ! 美は一日にしてならず!」
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