夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「……へ?」


わけもなく、ドキドキした。


補欠の目がやけに熱っぽくて、ひたむきに真っ直ぐで。


ドキドキした。


「あいしてる」


たぶん、きっと。


あたしは今、一生分じゃ足りなくて来世の分まで幸せを使ってしまったのかもしれない。


ずっと、憧れてたの。


こんなふうに、補欠に見つめてもらう事。


本当はずっと、望んでいたんだ。


「夢みたい……」


嬉しくて涙が止まらなくて、だけど、あたしは笑った。


カシャン。


「翠。おれ……」


補欠が、フェンスごとあたしの指を掴んだ。


「おれの人生、翠の笑顔にかけてみようと思う」


「は……あ?」


この男は何を言ってんだろうと思った。


あたしの笑顔なんかにそんな大切なものかけんなよ、って。


補欠はユニフォームに左手を突っ込んで、それを引っ張り出して、青空に向かって突き上げた。


「翠」


必勝のお守り。


フフ、と静かに微笑んだあと、補欠はお守りを太陽にかざした。


「太陽に誓って、おれは、翠ひとすじだ!」


朱い生地に、白い刺繍糸。


補欠の左手の中で、お守りが金粉のように輝いていた。


目の奥がじんわりと熱くなった。


あたしはこれ以上涙がこぼれないように、空を見上げた。


ああ、眩しい。


陽射しが目にしみる。
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