夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
携帯電話を握りしめたまま、ケンゴは走り出した。


「うん……」


あたしの横で、キョウヤは自分の左手の中をじっと見つめている。


左手を握って、開いて、またぐっと握って、


「うん」


キョウヤはするするとひとごみをすり抜けて、ケンゴの背中を追い掛けて行く。


キョウヤ。


去って行く彼の後ろ姿を見つめながら、あたしは立ち尽くした。


「翠? おい、翠!」


「……はっ」


結衣に背中を叩かれて、やっと我に返った。


べつに、ひとつも悪いことなんてしていないのに、やたらとドキドキしていた。


「何だどうした!」


「だから、あいつだよ。昨日の」


と結衣が指差した先には、キョウヤの後ろ姿があった。


「昨日、の?」


あたしが聞くと、結衣はあからさまに呆れ顔をした。


やっぱり聞いてなかったのかよ、と。


「昨日の帰り道で、あたし言ったべ」


昨日は、この南高に不法侵入した。


そして、確かに、帰り道は結衣と何を話したのか、あまりよく覚えていなかった。


「何が? 悪い、あんま覚えとらん」


「はあ……まあ、確かに翠、上の空だったしな」


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