夏の空を仰ぐ花
「パードゥン? パードゥン? パードゥン? もう一回言ってみろ」


あたしが睨み付けると、彼は「うっ」と苦笑いした。


メガネがトレードマークの爽やかな風貌。


クラス委員(副委員長)の、桐谷光貴(きりたに こうき)。


「その怒りっぽいとこも直せって。響也はあんなに温厚なのにな」


余計なお世話だ。


嫌われるのが怖くて、恋に突っ走れるものか。


恋ってのは命懸けだ。


本気の度合いが高い分だけ、リスクも高まる。


「うるせい!」


あたしが突っぱねた時、


「でもさ」


と割って入って来たのは、クラス委員長の作左部愛子(さくさべ あいこ)だった。


通称、あっこ。


彼女は1B一番の秀才女で、ツインテールが特徴的なアイドル顔だ。


ちょっと内気だが、芯の強さはクラス一番だ。


「そのストレートなとこが、翠ちゃんのいいとこだと思うよ。私」


「あっこ!」


周りの女子も片っ端からうんうんと頷いた。


「えっ! そうか? やっぱそう思う? まいったなあ」


ケロッとして笑ったあたしを、みんながクスクス笑った。


このクラスの帰宅部は、おそらく、みんな知っている。



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