夏の空を仰ぐ花
はっきり言って、明里はギャップの激しい女だと思う。


見た目は昭和モダン漂う清楚なのに、笑い方も話し方も下品だ。


しかし、あたしは明里のそこが好きだ。


「ムリムリ。夏井が絡むと、誰も止めらんねーべ」


「にしても、限度ってのがあるべしゃ!」


バンッ、と小さな手で机を叩いた結衣が、一瞬、頑固おやじに見えた。


「夏井見つけたからって、窓に立つ女がどこにいんだよ」


落ちたら終わりだべ、と結衣があたしを睨む。


「すまん」


いかんいかん。


またやっちまった。


「しょうがねえべ」


と明里が窓辺にもたれて、野球グラウンドがある方角を見つめながら、続けた。


「夏井のことになると、翠は周りが見えなくなるもんな」


まさに、その通りだ。


あたしは補欠に夢中なのだ。


「当たり前じゃ」


フン、とあたしは鼻を鳴らした。


「3階から落ちんのが怖くて、恋なんかやってられっか。バカヤロー」


エッヘン! 、と腕組みをしてふんぞり返ったあたしに、


「エッヘンじゃねえよ。なに威張ってんだよ」


とクラスメイトの男子が笑いながら話しかけてきた。


「そんなにガサツだと、響也に嫌われるぞ」



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