原石のシンデレラ
「――いやぁ、それにしても……凄いアパートだよなぁ」


苦笑いを浮かべて見つめる視線の先には、私の住んでるアパートで、


"凄い"=(イコール)『ボロ過ぎて凄い…』の意味が含まれてるような気がした。



「俺、去年から又こっちに帰って来てさ。……今、向こうのアパートを借りて…………え??」


私は、その言葉を聞いてショックと言うか、疑問がモヤモヤと胸の中を駆けずり回り、思わず冬真に抱きついていた。


――涙が零れ落ちそうだったから。


「何で……??いっつも私には何も言わずに……居なくなるの??――帰ってきたなら、少しだけでも顔見せてくれれば良かったのに……」


震えだす声を抑えて言葉にする度に、今までの出来事が走馬灯のように浮かび上がり、溢れ出す涙は頬へと伝って、砂砂利の地面へポタポタと落ちて湿っていく。


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