原石のシンデレラ
「ーーありがとうございます。」

私がペコリと頭を下げたと同時に、引っ越し作業は終了し始めていた。


「家具の配置とか、変更するなら今のうちですよ?お嬢さん1人で移動出来るような重さじゃないからさ。」

私は、自分の部屋に置いた家具を見渡した後に、言葉を返した。


「ー大丈夫ですよ。助かりました」

私自身も、最後の荷物を取り出すと、テーブルの上に写真立てを飾った。

家族3人で撮った、最後の写真…。


その写真を見た、中年の男性が一言口にした。

「ーーご両親かい?…とても優しそうな表情をしているね。…こんなに若くて可愛い娘さんを、1人暮らしさせるのは心配だろうね。」


その言葉に、私の胸はズキンと痛んだ。



「……実は両親は、もう居ません…事故で1週間前に亡くなりました。…だから、1人暮らしを始めたんです。」


中年の男性は、眉間に皺を寄せると眉毛を歪ませて、瞳から溢れそうになる涙を必死に堪えてるように見受けられた。


「ーごめんね。おじさん、知らないとはいえ…失礼なことを言ってしまったね」


指で涙を拭いながら、中年の男性は写真立てを見つめていた。
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