原石のシンデレラ
私と託麻が、顔を見合わせて微笑むのを、炉惟さんは、複雑な表情で見つめていた。


「……ッッお父さん役って、何ふざけたことを……!」


途中で言葉を止めて、あッッ!…と慌てて口を手で押さえて、気まずそうに目を逸らした。


「……炉惟さん、託麻さんは私のことを気遣って下さり言ったことです。責めないで下さい……」


ペコリと会釈をして私も目を伏せて、歩き出すと炉惟が――。

「雪詩さん、どこ行くんですか?」…と声をかけてきた。


「……着替えてきます。慣れない服装と靴で、疲れましたので…」


慣れない靴を履いていてズキズキと痛む脚を引きずりながら会場を後にした。


――――




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