黒猫劇場
 突然、ひとりぼっちな気持ちに胸が苦しくなった。

 右手のヴァイオリンが余りに重く思えて、目の前の女の子が余りに眩しく思えて、この空気の中で息をするのが苦しかった。

 深呼吸した。

「ヴァージナル? どうしたの?」

 リグが心配そうに僕の顔を覗き込む。
 それは彼女の癖だ。
 恥ずかしいくらいに相手の顔を真っ直ぐ見て、話す子なんだ。
 自分に自信の無い僕には、出来ないことかもしれない。

 急に翠色の瞳に見つめられて、僕は我に返った。

「うん、大丈夫だよ。昨日、夜更けまで起きていたせいだよ。きっと」

 これは本当だった。
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