黒猫劇場
 僕達は揃って、煉瓦造りの古風な建物に入った。
 床はカラフルなタイルが張り巡らされていた。昔、この綺羅星駅はおもちゃ工場だったと聞いている。

「ヴァージナル、ここでお別れよ」

 リグは駅構内の中央広場で突然立ち止まった。そして、にっこり笑った。

「え、どうして」

 この駅は町外れ。
 中心街へ向かう列車しか出ていない。少しは一緒にいられると思っていたのに。
 僕は戸惑った。

「久しぶりにヴァージナルと一緒に列車旅行も楽しそうだけれど。もう、ここからは別行動よ」

「そっか、大切な試験だものね」

 僕は自分に言い聞かせるように、頷きながら言った。
 そこで、僕達はさよならを言うわけでもなく、急に黙りこくってしまった。
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