黒猫劇場
 僕は夢と現実との狭間で漂っているような、妙な感覚のまま、サーカスの曲芸みたいに夜天を回転して居る。僕の身体は軽々と空高く舞い上がっていて、舞台の天蓋からぶら下げられた作り物のような満月に、ぼんやり浮かび上がっている。

 けれど、何かが頭に触れた様な気がして、僕はゆっくり眼を開けた。

 目の前を木の枝から離れた枯れ葉が、雪の様にひらひらと舞い降りている。側で誰かが枯れ葉を踏む音を立てながら、横切っていった。それを見て、僕は校庭の木の下でいつの間にか眠っていたことに気付いた。

 一体、何時間こうしていたのだろう?

 辺りを見渡すと、僕は身体中に枯れ葉をつけいた。足も半分以上覆われていた。手を何気なく枯れ葉の中に入れてみると、指先に冷たいものが触れた。
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