黒猫劇場
 引っ張り出してみると、それは、十ページくらいの冊子とロッカーの銀色の鍵だった。
 冊子の表紙には《シネマサーカス団》と書かれていて、サーカス団員が宙を舞っている。今朝、学校に来る途中、道化の恰好をした男の子が広場の前で宣伝広告として冊子を配っていたのを思い出した。

「そうか、そのせいであんな夢を見たんだ」

 僕はそう呟きながら、茶色のダッフルコートのポケットの中を探った。そこから出て来たのは、今年の誕生日にパパから貰った、懐中時計だ。針は四時少し前を指している。

「大変だ!急がなきゃ」

 僕はサーカスの冊子と鍵を掴んで、急いで立ち上がった。そして、体についた枯れ葉を払い除けると、校舎の方へ歩き始めた。
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