黒猫劇場
「だからさ、ヴァージナルも軽い気持ちで、ね」

 リグはそう言ってひとさし指をぴんと立てた。

「軽い気持ちでヴァイオリン弾きに行っちゃえ、ってこと。嫌だったら帰ってきちゃえばいいんだし。気持ちのこもっていない音楽ほど、つまらないものはないよ。ママだって、言うこときかない子に毒りんご仕込む魔女じゃないでしょ」

 僕はそこで初めて笑った。
 それに安心したのか、リグも微笑む。
 彼女は肩から提げられた小さめの鞄から、紙片を取り出し僕に渡した。

 そこには、
 印字でこう書かれていた。

『探偵社グリッグス リグロア・アレグロ』
< 20 / 25 >

この作品をシェア

pagetop