黒猫劇場
 ガチャリ。

 ロッカーの鍵を開ける音が暗闇に響いた。

 学校のロッカーは利用する人があまり居ないせいか、地下一階にこぢんまりと置かれていた。そこには光が届くこともなく、電気のスイッチも壊れていて暗闇に包まれている。

 僕は慣れた手つきでロッカーの中から大きめのケースを取り出した。中身は三年前から習っているヴァイオリンだ。
 僕は毎日、学校帰りにヴァイオリンのケースを片手に五時十五分の電車に乗ることになっている。

 二つ先の駅まで行くと、ヴァイオリンは勿論、あらゆる楽器を習うことの出来る《オルゴール》という音楽教室が有る。でも、その決まりごとは二週間前からやぶっている。流石に二週間も風邪で休んでいると、ヴァイオリンの先生も嘘だと気付くらしい。昨夜、先生から電話がかかって来て、僕はママにこっぴどく怒られてしまった。
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