『ずるいヒト。』

【一ヶ月前】

今日は、僕が初めてクラブというところに連れて来られた日だ。

勿論友人に。

ただ面倒だった僕は、バーのカウンターで一息吐いていた。

グラスの中、ゆらゆら揺れるカクテルに、少しだけ映る自分を見ながら。

ふと右を向くと、離れたところで飲んでいる女の人と目が合った。

にっこりと笑った彼女は、優雅な動作でその椅子から立った。

それはもう…妖艶に。

「ねぇ貴方、此処初めて?」

そう声を掛けられた。

「あ……はい」

気の利いた言葉も出ないほど、僕に近付いて来た彼女は美しかった。












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