クローゼットチャイルド
 これはあくまで仮定。
あまり神経質に考えたりはしないで、ただ浮かんだとおり
貴方のイメージの感想だけでいい。


「ごめんね、急に呼んで。」
実際悪びれた様子でもなく、招き入れた。滅多にしない電話。
それを不信に思うことは想定内。
「別に…」
少し警戒した彼が、落ち着きなく窓の外を眺めた。
「何年住んでんの?」
「もう…だいぶ経つよ。」
無機質な部屋なのにどこか喧しい。
心の声がうるさい感情の空間。
此処には長く居過ぎたと気付いた時にはもう、自分の色が染みついていた。
「で、何の用?」
落ちかないためか、要件ばかり急かす彼の前に香炉に乗せた蒼いお香を。
そして、ミルクティーに添えたシナモンスティック。
「今から話すよ。」
この空間を誤魔化すための香りの装飾。
「目を閉じて。頭の中で想像して。」


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