スターフィッシュ‼︎

「で、でも一ヵ月であそこまで弾けるようになるなんて、す、すごいです!」


楽屋で良夫さんが滝のような汗を拭きながら、そう言ってくれた。


「まだ人前で弾けるレベルじゃなかったってことだな」


王子が腕を組みながら、あたしを睨みつける。


「わりー俺がもっと上手く教えてれば」

「ちがうよ! あたしが緊張しちゃったから、次は……」


ゆーたがなぜか謝ろうとしていたため、あたしは急いでそれをかき消した。


「まあ、とりあえずお客さんにお礼言いにいくぞ。チビデブも笑って行けよ!」


そう言って、王子は楽屋から出ていった。

ゆーたが縮こまっているあたしの肩をポンと叩いてから、それに続いて行った。


「美緒さん、行きましょう」


心配そうな顔をしている良夫さんと一緒にあたしも楽屋を出た。


そーだ鏡の前で、ギターを持つポージングやってる暇なんてなかったんだ。

下手くそな自分と向き合いながら、ひたすら弾く練習すれば良かったんだ。
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