スターフィッシュ‼︎


その姿に、あたしの焦点が合う。

カナタちゃんも表情が無い目であたしを見る。


視線が、1つに繋がる。


その瞬間、

高いところから急に落ちるような体の震えが、

喉の奥から全身にかけて、あたしを襲った。



『あたし美緒さんの歌、大好きなんです!』


ティラミスと紅茶を目の前に、ニッコリと微笑む姿。


『おめーの歌なんかキモイんだよ! 調子に乗ってんじゃねーよブス!』


カッターナイフで鋭く赤が刻まれた、青白い細い手首。


これらの場面がフラッシュバックする。



あたしの歌好きって言ってくれたのは嘘だったんだよね。

ずっとキモイって思ってたんだよね……。



心の中に閉じ込めていたはずの想いが、じわじわとあたしを蝕んでいく。



――だめだめ! 今はライブ中だ!


あたしはお客さんの笑顔に視線を移し、

ギターをかき鳴らし、再び音に頭を揺らした。
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