だからこそ、キミは。
「…ごめん。」
下を向いて沈黙があった後の、佑くんがポツリと発した一言。
目線を逸らしながら髪を掻く佑くんの姿は、それだけのことなのになんで、こんなに胸を捉えるんだろう。
『なんで…?』
なんで、謝るの?
なんで、“ごめん”って、切なそうに顔を歪めるの?
なんで、なんで、なんで。
なんで佑くんは、ここに来てくれたの?
「…俺、帰るね。」
乱れた髪に、汗が浸る額。
ズボンから少しだけ、飛び出しているワイシャツ。
さっきまでは息を切らしていて、理由はわからないけど、駆けつけてくれたことは丸分かりなのに。
どうして、何もなかったように帰ろうとするの?