だからこそ、キミは。
「あー…。」
面倒臭そうに髪を右手でかき乱しながら、最初に沈黙を破ったのは先生で。
気まずさを取り除くのを失敗した先生の声は、なんだか場違いなように浮いている。
そんな先生の姿を、私の目が捉えることはなかった。
『……。』
「……。」
「…俺、授業があるから、もう行くわ。」
その台詞は、その場しのぎの嘘なのか、本物なのかはわからないけど。
とりあえず今の私にしてみれば、どうでもいいのは確かで。
佑くんのことだけが、何回もエコーのように頭を回り続けていた。