だからこそ、キミは。



「あー…。」



面倒臭そうに髪を右手でかき乱しながら、最初に沈黙を破ったのは先生で。


気まずさを取り除くのを失敗した先生の声は、なんだか場違いなように浮いている。



そんな先生の姿を、私の目が捉えることはなかった。




『……。』

「……。」

「…俺、授業があるから、もう行くわ。」



その台詞は、その場しのぎの嘘なのか、本物なのかはわからないけど。


とりあえず今の私にしてみれば、どうでもいいのは確かで。



佑くんのことだけが、何回もエコーのように頭を回り続けていた。



< 156 / 437 >

この作品をシェア

pagetop