だからこそ、キミは。



幼い私には、気づくわけがなかった。


佑くんのお母さんが、寝る間を惜しんで仕事をしていたこと。

限りが少ない休みの日でさえ、疲れた体を休むことなく佑くんの相手をしていたこと。


全部、全部、知らなかった。



―…気づいた時には、佑くんのお母さんは天国に旅立っていた。




“美優のことが、ずっと好きだったんだ”



―…中学3年生の春。


佑くんから告白された、中学校三回目の始業式。



そのころは佑くんとは殆ど関係がなくなっていたから、戸惑いを隠せていなかったと思う。



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