辻斬り
兵吉の妹は病気でいくばくもなかったが、先生は健気に町に行って医者に診せるべきだって訴え出た。だけど村からそんな者が出てると分かれば、村長がお上の許可なく石綿を掘っていることが明るみになる。それも女子供まで人足に使って。
村長は言ったんだ。医者代なんてそんな馬鹿らしい金を使うぐらいなら、病を撒き散らす前に死んでくれたほうがましだ。代わりはいくらでも辻に置き去りにされていくし、なにより秘密を守るほうが重要だ。
村中の人間を懐柔して作り上げた、欲にまみれた楽園を守ろうって必死だったんだ。
先生はついに兵吉の妹を連れて村を抜け出そうとしたがあっけなく捕まってな。口封じのために先生を殺し、先生を庇おうとした兵吉も妹もろとも殺された。
猟師たちに猟銃で追い回され、追い詰められて鍬や鋸で滅多打ちにされたんだ。
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