勇者様と従者さま。

外界と連絡がとれない、ということか。

「…わかったから。座れ」

 言われて初めて、エヴァは自分が拳を握って立ち上がっていることに気付いた。

「すみません、つい。あの、それで…」

 アーサーはふっと表情をやわらげた。


「その話をしていたところだ…シュリ、もう一回いいか」

「仕方あるまい」

 シュリはやれやれといった調子で話し出す。


「魔物にも色々な種類がおる」

「動物みたいなやつとか、人に取り憑くやつとかですか?」

「まあ、そうだな。しかし我が今問題にしているのはそこではないのだ。…例えば、ステファンに取り付いていた、あやつ。あやつは人の血肉自体から力を得ていた」

 エヴァが顔をしかめる。気持ちのいい話ではない。

 アーサーも心なしかげんなりした表情だ。

「魔物としてあまり高位ではない。力を得るには効率の悪い方法だからな…強い力を持つ魔物の多くは、人の精神を喰らう」

 エヴァははっとした。

「もしかして!」

「…絡んでいる、かもしれぬ。こんな事例は聞いたこともないから断言はせぬがな」

 エヴァの空色の瞳が輝いた。

「じゃあ、魔物を探して…っ!」

 シュリは呆れる。

「…断言はせぬと言っておろう」


「それにしても、詳しいですね、シュリ?」

 そのことばに、シュリは…

「…おぬしら平和ぼけした世代とはわけが違うのでな」

 一瞬、表情を強張らせたように見えた。



「ほら、エヴァ様、もう戻れ」

 話も終わり、アーサーがエヴァを促す。

「はーい」

 エヴァが不満そうな返事をする。

 その時。

 シュリが、目を見開いた。


「耳をふさげっ!」


 叫ぶと同時にアーサーとエヴァに飛び掛かり、耳を隠すようにして頭を床に押し付けた。

 二人の頭が、がんと音をたてる。

「いた!なんですシュリ!」

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