ヒトノモノ






あたしはいつものように自分の部屋で啓介を待つ。




いつもと違うのは、テーブルの上の華やかな料理。




今日は啓介と付き合って半年記念。




《~記念》とかって、付き合ってたら定番の行事だし・・・




ちょっと、サプライズでやってみようと思った。






19時半・・・




そろそろかな・・・?




あたしは、インターフォンに視線をやった。




ところが、インターフォンではなく、鳴ったのは携帯だった。





・・ブブブ・・・ブブブ・・・




啓介からメールだ・・・





【ごめん。今日は会えなくなった。明日は必ず行くから】






・・・なんで?仕事が長引いてる??




それとも・・・奥さん??




仕事だったら、席を外して電話してくるはず・・・




ってことは・・・やっぱり奥さんなんだ・・・







あたしはスゥーーーーーと大きく深呼吸をして返信する。





【了解です。】





送信し終わると、携帯を持つ指に力が入った。





会えない日なんて今までにも何回もあったじゃない??




こういうの・・・はじめからわかってたことじゃない??





「何で今日会えないの??」・・聞きたいのに聞けない。




でも。今日は会いたかった・・・





あたしは、テーブルに並べられた料理をそのままゴミ箱に捨てた。




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