ヒトノモノ
ふたりを引き離すモノ
啓介と一緒に住むようになって3ヶ月が過ぎた頃。
あたしたちの関係に変化が出てきた。
あたしは、すっかり《奥さん》という存在を忘れていた。
啓介の奥さんは、啓介が出て行ってから啓介に何も言って来ることはなかった。
愛人のあたしに対しても何も無く・・・
正直、いつか興信所に頼んであたしの存在を探し出すんじゃないか・・・なんて思ったこともあった。
でも、あの気弱そうな奥さんがソコまでするはずが無い・・・
それに啓介に対して愛情も無いというのはわかっていたから怖くは無かった。
・・・ところが・・・
お給料日にソレは起こった。
啓介は自分名義の口座にお給料を振り込まれていた。
その口座の通帳とカードは奥さんが所持している。
家を出てから、啓介は毎月奥さんからお給料日に啓介の分として10万円を啓介名義の別の口座に振り込ませていた。
それが・・・振り込まれなくなった。