AZZURRO
私は


このまま

どこに行ってしまうのだろう…?



また
何の前触れもなく
突然、どこかの世界にトリップしてしまうのか


もしくは

元の世界に戻れるのか



平穏な日々に戻ってから
一抹の不安が
雪乃の心でくすぶり続ける



「ユキノ…どうした?」


突然耳元でささやかれた
良く通るバリトンの声


ハッと
見上げると

鼻が触れそうなくらいの距離に
深い藍色の瞳と銀糸がかかる
中性的な顔


「え?」

余りの近さに
雪乃の顔がボッと赤く染まった


「体調が悪いのか?
最近食欲が落ちたとケシャから聞いたが?」


心配そうにのぞきこむ顔は
じりじりと距離を詰める


離れようにも
いつの間にか腰に回った手が
それを許してはくれない


「だ、大丈夫です。」


「…本当に?」


「本当に、です。」

にこっと笑った雪乃に
しぶしぶ体を離したクリス


雪乃は解放感に
ほぅっとため息をつく



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