AZZURRO
雪乃はさらに
走った


そして
急に視界が開け
林を抜けると思った瞬間

目の前の光景に
絶望が広がる


必死で逃げ出し
走り続けた雪乃を待っていたのは

見上げるほど高く
そびえたつ城壁だった

左右を見ても
壁の終わりは見えない


雪乃は意を決して
その壁を上り始める


しかし
壁は垂直で表面も滑らかに加工してあり
まったくもって登れない


バンっ!

雪乃は強く壁を叩いた

「誰か!!
助けて!誰かぁ!!」


精一杯叫ぶも虚しく壁に反響していく


ガザッ!!

大きく茂みが揺れたかと思うと

賊の二人が息を切らして現れた


「さぁ、大人しくこっちへ来い。」

大柄な男が手を伸ばす

雪乃は男たちとなんとか距離を取ろうと
壁に背中を押しつける


「どうせ逃げられやしないし
助けだって来ない。
大人しくすれば、傷つけやしねーよ?」

小柄な男もゆっくりとにじり寄る


「だれが行くもんか!
神官なんかに私を渡してたまるもんですか!」

精一杯啖呵を切るが
自分で情けなくなるくらい
その声は小さかった

カタカタ…と体が小さく震えている

どうしよう…

どうすればいいんだろう…
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