AZZURRO
数時間後


雪乃は
今は使われていない
荒れ果てた小さな神殿の前にいた

手を後ろで拘束され
前と後ろは男二人に挟まれている


そして
生ぬるい風が足元を
すり抜けた時


神殿の中から
マントをかぶった一人の男が姿を現した


「…時間どおりだな。」


低いだみ声が雪乃の耳に届く
そして
男の舐めるような視線を感じて
身ぶるをした


「さぁ姫を渡せ。」

「金が先だ。」

神官の言葉に
雪乃の前に立っていた男が反論した


「お前…
この前会った賊ではないな?」


神官が異変に気付くのと同時に
雪乃を挟むようにして立っていた男二人は
神官を取り押さえた

「無礼な!
私は神官である!神に仕えるものぞ!」


「知っていますとも。」

「だが、人攫いの神官など
敬うに値しないんだよ!」

賊に化けていたポールとゴルチェは
やすやすと神官を拘束した


そして
物陰から、数人の兵士とジャンを従えた
クリスが現れると神官の男は明らかに
顔色を変えた
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