AZZURRO
スバルは
クリスから剣を借りると

洞窟の入口に立って
剣を胸にかざす

そして静かに瞼を閉じた


すると
ふわりと
彼のチュニックの裾が揺れ始め
森の木々がざわめいた

そして
スバルは静かに祈りの言葉を紡ぐ

雪乃には
スバルの言葉の意味がわからなかった
それは神官だけに伝わる
祈りの言霊


しばらくして
スバルの握る剣に光が宿り
そのまま
スバルは剣を振りかざし
空を切った


その刹那
見えるはずのない結界が
薄く光り
そして消えた


「…剣をお返しいたします。
これで、結界は消えました。」


恭しくスバルはクリスに剣を返す

「流石だな。
会うたびに腕を上げていく。」


「お褒めにあずかり光栄です。
どうぞ中にお入りください。

微力ながら私もお供いたします。

残った部下がここで新しい結界を張って
外部からの侵入は食い止めますので
こちらの事はご安心ください。」


スバルの言葉に
クリスは頷くと
雪乃を背中に庇うようにして
洞窟に足を進めた




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