AZZURRO
クリスの言葉に
ジャンはまたしても盛大にため息をこぼした


「私だけの努力では
どうする事も出来ませんので
ユキノ様にはこれから様々な教養を
学んでいただきましょう。

その器量や思考なども計らねばなりません。」


「ふん。
そんな事を言って…
既にユキノの教育の為に
ハジェンズの宮に講師を招いている事を
私が知らないとでも思ったか?」

しかしジャンはそんな追求も
顔色変えず返した

「善は急げといいましょう?
それに
主の願いをかなえてこその側近ですから。

まぁ
その願いが度が過ぎてる事もありますが。」


もちろん最後に嫌味を付け加えることも
側近長官は忘れなかった


「…頼りにしているぞ。ジャン。」

「御意。」


ジャンはずいぶん前から
雪乃がもしこの世界に残る事を決めたら
本物の側室になったら

クリスの正妃として育てようと決意していた


雪乃の曇りない眼力と
清らかな心

そして
弱きものを思う優しさ

貴族や他国の姫には見られない
そんな姿が好まれた


だがなにより
ジャンを動かしたのが
クリスの雪乃に対する想いだった

主が間違った道に進めば
それを正すのも家臣の役目
しかし
初めてクリスから望んで愛した娘を
卑下することなど

クリスと兄弟の様に
育ち幼少の頃より仕えてきたジャンには出来なかった



…お供しますよ…
どこまでも…

政務に励むその君主の背中に
ジャンは思った
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