AZZURRO
そんな雪乃の姿に
クリスは
苦しげにほほ笑んだ


「すまない。
少し…焦りすぎたか…。

だが
明日にはカイルに発つ。
カイルはこことは比べ物にならないくらいに
大きな都市で様々な人に溢れている。

危険はないように細心の注意を払うつもりだが
何もないとは言い切れない。

異世界のお前は何かと珍しいからな。」


ここにきて思っていた

この国には典型的な日本人は私しかいない

黒髪も象牙色の肌も

ハジェンズの市民は
みんな欧米人の様な顔
髪の色も様々で


市街地に行けば
私は好機の目にさらされ

クリスの側近たちがいなければ

見世物小屋に入れられていたのかもしれない

「ユキノを守るために
ユキノを知りたいと思った…。

これは
私の我がままだ。」

自嘲気味に笑ったクリス

雪乃はゆっくり
元のベッドに戻った


クリス様は私を本当に心配してくれているんだ

クリスの真摯な態度が
雪乃の心の氷を
少しずつ溶かしていた
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