*片翼の天使*

――あたしは、お化け屋敷内で、うずくまる。


嫌なことを思い出した……。





情けないことに、あの事件がトラウマになって、いまだに暗いところは苦手だ。

あの時の夢をたまにみる……そのたびにうなされる。

あぁ……なんだか気持ち悪くなってきた。





タンタン……



足音が聞こえる。
またお化けか?
あたしは、うずくまったまま震えていた。

「ナズちゃん!
……泣いてるの? 」

「……!? 」

あたしは、振り返った。

「王子?
……泣いてないよ? 」

なんで、いるの?

「そっか」

王子……?

「なんで?」


「なんとなく……そんな気がした」

「そっか。あたしが泣くわけないじゃん」

あたしは、痩せ我慢した。
多分ばれてたけど……。
強がっていないと、あたしがあたしじゃなくなっちゃう気がしたんだ。
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