*片翼の天使*
あたしは、他目的室で教科書を買い、帰ろうと下駄箱に靴を入れた。
そのとき……
「いてっ!? だれだっ? 」
誰かに手を引っ張られ、体育館裏に連れて来られた。
この後ろ姿……もしかして?
「強引に連れて来ちゃってごめん。
ちょっと話がしたくて……」
……やっぱり。
あたしを引っ張って来たのは、ハルトだった。
あたしは、話なんてない……早く帰りたい。
「あの、ナズちゃんだよね?
覚えてない? 俺のこと……」
体育館裏は、誰もいなくて、王子の声だけが響いた。
「だから同じ名前の人違いだって! 」
あたしは、王子なんて知らない……。
「結婚する約束までしたんだけど……」
「……!! 」
もしかして……!?
……あの子の。
「ほんとになにも知らない?
覚えてない? 」
「し……知らないってば! もういいでしょ! じゃあね! 」
あたしは、駆け出した。