magnet


やがて飽きてきたので視線を教室内に戻した。


いつものように、前の席には愛架が座っていてこちらを向いていた。


「心菜心菜ー。今日は球技大会の出場種目を決めるでしょ?何にするの?」


「……補欠枠を全力で狙う」


「だよねー。私も」


運動は好きじゃない。出来る事なら避ける。それは愛架も同じ。


二人で補欠なら人間観察に付き合わされるだろうな。……去年がそうだった気がする。


「一緒に湊くんを見に行こうね」


「愛架、湊好きだね」


「うん。人として。それより、呼び捨てになってるけどもしかして親密度上がってる?」


「あーー……」


一回呼び捨てにすると、まぁいいや。って気分になったからそのままで呼んでる。


だけど、勘違いしないでほしい。


「親密度なんて存在しないよ」


「えーー……?」


残念そうに眉を下げる愛架。私はまた視線をグラウンドに向けた。


うん。親密度なんてない。



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