magnet
「えー。全力を尽くして頑張ってください」
一週間なんてすぐにくるわけで。今日は球技大会なわけで。誰も休みはいないわけで。つまり、今日は楽な日だ。
「心菜っ。体育館に行こう」
真っ先にそう言う愛架に首を傾げた。でも5月の終わりとは言え、紫外線が多い。とある美容師さんも5月でも多いなんて事を言ってたし。
日焼けしたくないのだろう。私だってそうだ。
「バスケバスケ。きっと湊くんはバスケに出るよ」
全く違う理由だった。
そうか、湊を見たかったのか。
「バスケに出るって聞いたの?」
「んーん。あの筋肉の付き方、最近までバスケしてた感じだから」
「そ、そっか」
またしても愛架には驚かされる。
どんな目をしていたらそんな事が分かるんだよ。
何とも言い表しにくい気持ちを持ちながら、グイグイと引っ張る愛架に逆らいもせず歩いた。