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篠田さんは、胸の前でキュッと手を握り締めていた。


「どうしたの?」


出来るだけやんわりとした口調で声を掛けると少し力を抜いたのが目に見える。


「あの、湊くんを止めてもらえませんか?瞼が切れてるのに試合するって聞かなくて。ここ先輩と約束したからって」


チラリと、湊の方を盗み見てみる。


相変わらず人が囲んで、まだ足掻いている様子で思わず溜め息が出た。


何をそんなにムキになっているのか。


「――分かった。無理矢理でも試合しないようにしてみる」


ありがとね。と一応篠田さんにお礼を言って歩き始めた。


さて、私の言うこと聞いてくれるかが問題だ。



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