モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語






「遥ー、元気かー!」

「遥、容体はどうだ?」

しばらくして、八木と健二が彼を迎えにきた。

荷物はそれほど多くなく、着替えをまとめた鞄を持って遥は立ち上がる。

「あ、荷物は俺が持つって!」

「荷物くらい持てるし。」

「何言ってんだよ、一応けが人だろー?」

健二が 俺を頼れって と遥を気遣うが遥は大丈夫だと言い通し、

しょうがなく好きにさせるようにした。

足は松葉杖をつくほど重症ではなかったらしい。

少し足を引きずるようにしてだが、遥は歩けていた。



「遥、なんかあっただろ。」

「え?」

八木の車に乗り込んだとき、ふと健二が言った。

「ずっと眉間に皺よってるぞ。」

ちょん、と彼の眉間に指をあてる。

それを振り払い、 別に とそっけなく言った。

八木は運転に集中しているらしく、後部座席の二人の会話は聞こえていないだろう。


「・・・佐々木理子に、何か言われた?」

ドクン、

健二がじっと遥の目を見る。

彼が理子の事を想っているのは知っている。

そのために、昨日の事を言うのは気が引けた。


「なにも・・・。」

「嘘つくなよ。」

「お前に何がわかるんだよ。」

悪気があったわけではなかった。

その言葉に健二は遥をばっと見て、睨む。

「その言い方はねえだろ!心配してやってんのに!」

「心配してなんて頼んでないけど。」


「おい、お前ら喧嘩はやめなさい!」

言い合いが始まった二人に八木は慌てて静止をかけるが遅かった。

「んだよソレ、・・・遥、お前、喧嘩売ってんのか?」

「それはそっちだろ。」

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