モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語


「おい、遥見なかったか!?」

「え?遥ならさっき自室に向かってったの見たけど。」

「さんきゅ!」

「健二!?と、臨時マネ?」

部員に居場所を聞くとすぐに走り去ってしまった健二を見て

驚いていた。

そんなことは気にもとめず、遥の部屋へと向かう。


「ちょっ、かっ、川崎くんっ!」

健二に止まるように言おうとしたが、まったく聞こえていない。

思わず泣きそうになった。




どんっ、

「へぶっ!」

急に立ち止った健二の背中にぶつかり、変な声を発してしまった。

彼はやっと海の腕を解放すると、少し切れた息を整えて

目の前の遥の部屋のドアノブに手をかけた。

「はぁ、はぁっ、はぁ。」

普段あまり運動をしない海は必死で空気を吸って呼吸を落ち着かせる。


がちゃり、

健二は、ノックもしないまま部屋に入った。

悪いとわかりつつ、海もそれに続いた。





「っ、は?」

「川崎君、どうした・・・の、」


二人は目の前の光景に声がでなくなった。

それは、海と健二だけではない。


目の前で、理子とキスをしている遥も、硬直した。


どんっ!

「きゃ!」

遥は理子を突き飛ばし、あわてて口を開いた。

「誤解だ!理子がいきなり「遥は、佐々木さんに告白したんだろ。」

健二の声は震えていた。

「お前、最低だな。」

低く言い放たれた言葉は遥の胸に突き刺さった。

反論しようとしていた口は閉じられ、そして、罪悪感に満ち溢れた表情で

健二を見る。


「・・・ごめん。」

遥の声は彼には届かなかった。
< 118 / 206 >

この作品をシェア

pagetop