モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語


「川崎君、」

「ごめん、筧さん。俺やっぱ戻るわ。」

「・・・。」

健二はイライラしているのか、キッと遥を睨むとわざとらしく

ため息をついた。

時計を確認して、もうすぐ部活が始まることを知り

何も言わずに部屋からでていった。

ぽつんとその場に残された海は、どうしようとオロオロしだす。

健二と一緒に出ていけばよかったと痛感した。



気まずい空気が流れる。

「っ・・・。」

理子はバレないように海をにらんだ。

(なんで邪魔すんのよ。)

突き飛ばされた拍子に尻餅をついたままだった彼女は立ち上がる。


「遥君、いきなりゴメン。でも、あたし本気だから。」


それだけ言うと彼女も出て行った。

すれ違いざまに、海だけに聞こえるようにある言葉を残す。

《邪魔しないでよ。最低。》

「っ!」


友人だと思っていた理子の言葉にショックを受けた。

それだけじゃない。

理子と遥がキスをしていたことにも衝撃を受けている。

いまだに信じられない現実に、海はどうすればいいのかわからなくなった。


「は、遥、」

「・・・・。」

「怪我、大丈夫なの?」

「・・・っ、」

そう問えば、彼の表情が歪んだ。

「お、れ、」

絞り出された声はひどく震えていた。

どうすればいいのかわからない。

「遥。」

双子だからだろうか、弟が悲しんでいることが痛いほど伝わった。

無意識に海は駆け寄っていた。

「・・・海?」

ぎゅう、

海は遥を抱きしめた。
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