モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語


「ねえ、やばくない?」

「隣のクラスでさっき殴り合いしてたんでしょ?」

「佐々木理子だっけ?あの子って

性格悪いよねー。」

隣のクラスの光景を偶然廊下から見ていた女子生徒の声が聞こえ、

遥は目を見開く。

「遥!」

健二の声を聴かずに教室を飛び出した。

そんな様子を見て、またヒソヒソと会話をしだす。

「やっぱり遥君って、実の双子の事好きなんだあ。」

「なんか幻滅ー。」

悪化していく状況に冬樹はため息をついた。



ガラ、

隣の教室のドアを開けると、

丁度海が尻餅をついた状況から起き上がっているところだった。

「海、お前大丈夫か?」


「彼氏のお出ましかよ。」

「うわー、やっぱり近親相姦なんじゃん。」

冷やかしを気にしないふりして、遥は強引に手を引いて教室から出る。

その様子を面白くなさそうな表情を浮かべた理子が見ていた。


「は、遥、私の事はほっといても大丈夫だよ。」

だから教室に戻って、と続けようと口を開いた瞬間

遥は振り向き、強気な発言をした。


「まわりの奴らの事なんて気にすんなよ。

近親相姦とか、そういうこと言われても俺がお前を好きなのは

変わらないから。」

「っ、うん。」


俺たちは俺たちだ、と遥は笑った。

そして痛々しい海の切れた口端にそっと触れる。



どさ、

突然何かが落ちる音が聞こえた。

何だろうと思い二人は音のしたほうを向く。


「っ!」


そこには、鞄を落とし、両手で口元をおさえて目を見開いている

母親の姿があった。




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