モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語
「つ、疲れた。」
「昨日よりハードだったね。」
ワゴン車の前に並べられていた椅子に二人は座り
ぐったりとしている。
今日は店は休みだった為に客はいなかったが、
休憩なしに動きまわっていたために体力の限界だった。
「お疲れ。」
沢田の声と共にカタ、という音がした。
テーブルを見ればいつの間にか豪華な料理が並べられている。
「え?」
「明日に備えて、食べとけ。」
今日よりもっと疲れるぞ、と沢田は笑う。
「「・・・ありがとうございます。」」
「おう。」
忙しく、疲れるけど楽しい。
素直にそう感じた。
ここで海とずっと一緒に暮らしていけたら、と考えて
遥は自分の考えに呆れた。
そんなの、できるわけない。
「遥、食べないの?」
手が止まっている弟を見て心配そうな表情を見せる海。
「いや、食べるよ。」
料理を一口、口に運んだ。
*
「・・・健二。」
最後の授業が終わる予鈴と共に、冬樹は声をかけた。
「なんだよ。」
「落ち込みすぎ。」
「・・・そりゃ、落ち込むだろ。」
健二は昨日の事を思い出す。
理子と二人で遥の家に向かったのだが、家に明かりはついていなかった。
出かけているのかと思ったが念のためにチャイムを鳴らすと
中から双子の母親がでてくる。
母親の表情は疲れていて、目元には涙のあとがあった。