モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語
*
久しぶりの学校。
校門の前で深く深呼吸した。
大丈夫だと何度も自分に言い聞かせ、海は足を踏み出した。
ガラ、
教室のドアを開けると、視線が一気に降り注ぐ。
ひそひそと聞こえる声を無視して自分の席に座った。
自然と俯いてしまう顔。
ガタン、
「?」
ふいに物音がして顔をあげれば、
前の席に座っている理子の姿があった。
視線は自分に注がれている。
「まったく、俯いてないでしっかり前を見てなさいよ。」
ほら、とぐぐっと海の頬を掴んで前を向かせる。
「り、理子ちゃんっ!?」
「・・・今まで、ゴメン。」
「え?」
「だから、ゴメンね!」
目を見開くと、理子の頬は少し赤く染まる。
「う、うん。私のほうこそ、ごめんなさい。」
「なんで海が謝るのよ。」
「私にも悪いところあったし・・・。」
「気にしすぎ。・・・遥君、転校したって聞いたんだけど。」
「・・・うん、おばあちゃん家の近くの高校に転校したの。」
「・・・そう。」
昨日の夜メールが来たことを思い出し、理子は表情をゆがめた。
「近々、健二たちと説教しに行かなきゃね。」
「え!?」
「海も強制参加なんだから。」
理子はまわりの目を気にすることなく、自然に海と会話をしていた。
その様子を見て、 なんで理子が!? とか ありえねー とかいう声が届く。
そんなことを言われても全く気にしていない理子を見て、海は驚いた。
「・・・言いたい奴には言わせておけばいいのよ。」
「・・・ありがとう。」
「別に。あ、お昼の事なんだけど4人で食べない?」
「4人?」
「あんたと健二と冬樹と、あたし。」
「・・・いいの?」
「いいから誘ってるんでしょ。」
遠慮しないでよ、と理子は笑う。
海は微笑み、心の中で遥に ありがとう と礼を言った。