モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語


(遥くん、半径20メートル以内に入らないっていう約束、守れなくてごめんね)

心の中で謝ってからおとなしく席につく。


「うっわー!遥かわいそー!」

「遥君に近づくなよブス」

「筧君が腐るー!」


遥のファンや、好意を抱いている者、友達が口々に海を攻めだした。

「はあ・・・」

遥は大きくため息をつく。


「お前ら、言うだけ無駄だろ」

「え?何?遥こんな奴の肩もつの?」


「ちげーよ、ただ、こんな奴を視界にいれるだけ無駄だっていってんの。

初めからいないように扱うのが一番楽。空気でいいじゃん、空気。」


「あははは!遥君ひどーい!」

「まあ、遥の言ってること一理あるな!」

海は俯いた。

(ごめんなさい、遥くん)

暴言は今まで言いなれていたはずなのに、

遥にまで馬鹿にされたショックで泣きそうになる。




「お前らー席につけー!」

新しい担任が入ってきた。

それを合図に生徒たちは自分の席に移動をはじめる。

遥は頬杖をついて新しい担任を見た。


ちなみに、遥と海が双子だっていうことを知っているのは学校の校長のみだ。

一年の時に遥が直接校長に、他言しないようにお願いをしに行った為に誰も知らない。


この学校の校長色んな意味で生徒のことをわかってくれてると思う。



「新しく担任になった、小谷 康弘だ!小谷先生と呼ぶように!」

いかにも熱血教師っぽく、正直遥はあまり好きになれそうになかった。



海はずっと俯いたままで、前をみようともしない。


「じゃ、早速出欠をとるか!青山茜!」

「はーい」

「はーい、じゃないだろう!はい!それにもっと大声で。」

「めんどくさ・・・」

「青山茜!」

「はい!」


小声で返事をした者はしつこくやり直しをさせられる。


(・・・だから熱血っぽい人は嫌なんだ)

「小村信二!」

「はい!」

「筧海!」

「・・・。」

「ん?いないのか?」

海の返事があまりに小さすぎて聞こえていなかった。

これには周りの生徒がクスクスと笑いだす。




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