シュークリーム
「用事、あるんだよね。誰かと約束してるの?」


「あぁ」


すかさず頷いた村上君を見て、つい頭を掠めた言葉が出てしまった。


「女の子と?」


その質問にほんの一瞬だけ目を見開いた彼は、少しだけ戸惑いの表情を浮かべた。


「まぁ……」


胸の奥を刺すようにチクリチクリとしていた痛みが、鋭くズキンとした感覚に変わる。


「そうなんだ……」


平静を装う傍ら、胸の奥が締め付けられていく。


覚えたての苦しさを逃がすように、息をそっと吐いた──。


< 55 / 131 >

この作品をシェア

pagetop