シュークリーム
今日こそ定時に帰れると思っていたのに、久美に握られた弱味にそれを阻まれてしまった。


コピーを取りながら時計を確認しては、何度もため息が漏れる。


すっかり定時を過ぎたフロアには、まだたくさんの社員が残っているけれど──。


いつの間にか、村上君の姿はなかった。


思わず、またため息が零れる。


がっかりしながらコピーを済ませ、律儀に一部ずつホッチキスまで留めてあげてから、久美のデスクにそれを置いた。


我ながら、そんな自分を本当に親切だと思う。


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