シュークリーム
「なに?」


靴を履いたまま壁に寄り掛かった村上君が、視線だけを私に寄越す。


彼の横顔からは怒りにも似た感情が見えて、少しだけ怯んでしまいそうになった。


「あの……」


俯く私から漏れた声は小さくて、やけに渇いた喉に張り付いた言葉はやっぱり出て来ない。


だけど……。


村上君は私が話し出すのを待ってくれているみたいで、彼がその場から動く気配はなかった。


そのことに気付いた私は、震える唇で息を吐いてから小さな深呼吸を繰り返していた。


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