エルタニン伝奇
ラスは頭を振った。
意味はわからないが、やはり自分には呪いがかかっているのだ。

メリクもトゥバンが選んだのなら、あの神託に関係しているのだろうか。

「それで王。王が見つけた、巻物というのは?」

あの神託のことを考えると、気が滅入る。
俯いていたラスは、サダルスウドの声に顔を上げた。

「イヴァンの地にある氷の柱に封じられし姫君は、エルタニン王家の姫君なり」

巻物の文句をそのまま口にしたラスに、サダルスウドの顔が強張った。

「心当たりがあるようだな。先の、コアトルが二体現れたことにも、関係しているのか?」

ああ、と嘆くように呟き、サダルスウドは両手で顔を覆った。
そのまましばらく、考えをまとめるように、目を閉じる。

「・・・・・・そうですね。ええ、もう全てが白日の下に曝される日が来たということでしょうか。ですが・・・・・・氷の美姫を探し当てたそのときこそ、全てをお話致します。それまでは、どうか」

深々と頭を下げるサダルスウドに、ラスはため息をついた。

「氷の美姫は、見つかるか?」

ラスの言葉に、サダルスウドは確信を持って頷く。

詳しい場所は、誰も知らない。
探しに行った者は、帰らないという。
そのような難関ではあるが、サダルスウドの瞳に、迷いはない。

「いいだろう。せいぜいはぐれないように、ついてくることだ」

ラスはそう言うと、サダルスウドをさがらせた。
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